絢爛(けんらん)豪華な時代絵巻を堪能できる「歌舞伎」。最近では子どもに人気のアニメを題材にした演目もあり、若い世代からも人気を集めています。
とはいえ、歌舞伎はお金がかかりそう、難しそうと、ためらっている人も多いのではないでしょうか。そもそも歌舞伎は庶民の娯楽。誰でも気軽に楽しむことができる伝統芸能のひとつです。歌舞伎の基礎知識や鑑賞のポイント、初心者におすすめの演目などをご紹介します。
歌舞伎は庶民の娯楽です
安土桃山時代から江戸時代初期にかけて、出雲の阿国によって創始された「歌舞伎」。奇抜な服装をした男が茶屋で遊ぶ様を演じ、人気を博したのがその始まりだといわれています。
江戸後期になると専用の芝居小屋が開かれるようになり、歌舞伎役者は今でいうところのアイドル的存在として多くの人々を魅了。桟敷席(さじきせき)は奥女中や侍たちで占められていましたが、升席といわれる座席では商人や庶民が酒を飲みながら歓談する姿も見られたようです。
明治に入ると、歌舞伎を高尚な趣味にしようとうする動きもあったようですが、もともとは大衆演劇のひとつでした。
歌舞伎で知る当時の世情
歌舞伎の作品は大きく分けて「時代物」と「世話物」に分類されます。
「時代物」は、合戦を描いた物語や、各地に伝わる伝説などをモチーフにした演目です。一方、「世話物」では江戸時代の町人の世界が描かれ、駆け落ちや心中、強盗など当時の事件を芝居用に脚色して作られています。
歌舞伎が「それらしさ」を追求した舞台
当時の様子を衣装や舞台装飾などで忠実に再現しようとする近代の演劇に対し、歌舞伎は「それらしく」見えることに徹しているのが特徴です。歌舞伎ではすべての役を男性が演じますが、「女方(おんながた)」を演じる役者は衣装や化粧で装うほか、あえて両ひざをつけて内股で歩くようにするなど、立ち居振舞いによっても女性「らしさ」を表現します。
衣装やかつら、化粧で誇張表現されるのも、この「らしさ」を追求するためです。わかりやすいところでは、「隈取(くまどり)」と呼ばれる歌舞伎特有の化粧があります。隈取は顔の筋肉や血管のある場所をなぞり、感情の起伏によってそれらが浮き上がる様子を表しています。赤い隈取をしているのが正義の味方であり、青い隈取は悪人というのが定説です。
まずは「一幕見席」に行ってみよう
通常、歌舞伎は昼の部、夜の部と1日を通して2~3つの演目が上演されています。演目の間には劇場名物の「幕の内弁当」やおやつなど、食堂で食事をすることができます。
1日を通して観劇するためには、一等席だと数万円かかることもあります。はじめての歌舞伎観劇におすすめなのは、好きな演目をひとつだけ観ることができる「一幕見席」です。舞台から一番離れている席ではありますが、歌舞伎の世界は十分に楽しめます。
お値段も1500~3000円前後ととってもお得。日本を代表する歌舞伎役者たちの名演技をこの価格で観ることができるとなれば、出かけない手はありませんよね。
はじめての方におすすめ「助六由縁江戸桜」
はじめて歌舞伎を観劇するなら、「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら.)」はいかがでしょう。
通称「助六」と呼ばれるこの演目は、絢爛豪華な遊女の衣装や演出、江戸っ子の粋な美学などが詰め込まれ、有名な役者が演じることでも知られています。
多彩な登場人物も魅力にあふれ、歌舞伎の世界をたっぷり堪能できます。
初心者でも楽しめるサービスいろいろ
セリフやストーリーの理解に不安がある方は、「筋書」と呼ばれるパンフレットを購入したり「イヤホンガイド」を使用したりするとよいでしょう。イヤホンガイドでは舞台の進行に合わせて解説が流れ、役者からのメッセージが録音されていることも。
服装は?マナーは?歌舞伎鑑賞の基礎意識
歌舞伎には正装で観に行くのがマナーだと思われている方も多いようですが、歌舞伎は庶民の娯楽。服装に決まりごとはありません。ただし、歌舞伎で描かれる世界は非日常であるため、それに見合った服装をおすすめします。男性ならジャケットを着用し、スニーカーやジーンズは避けるのが無難です。
鑑賞中の拍手のタイミングは、周囲に合わせればOK。「成田屋!」や「音羽屋!」など、役者の屋号を呼ぶタイミングは慣れていないと難しいので、ベテランさんに任せておきましょう。
お孫さんと楽しめる「スーパー歌舞伎」が面白い!
三代目市川猿之助(現・猿翁)は、日本が誇る歌舞伎を幅広い世代に親しんでもらおうと、新作歌舞伎「スーパー歌舞伎」を創始しました。これは、最新の舞台設備や照明を駆使し、歌舞伎を現代的な演劇として見直す試みです。
最新の演目は、子どもたちに大人気のアニメを題材にしたもの。壮大な世界観を歌舞伎で表現しています。アニメ世代のお孫さんと、日本伝統の歌舞伎を楽しんでみてはいかがですか?
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