ドラマの題材に選ばれたり、噺家(はなしか)がバラエティーや映画に出演したりすることで、世代を問わずじわじわと人気が高まっている「落語」。
とはいえ、落語そのものをテレビやラジオで聴くことはあっても、「寄席(よせ)」は敷居が高いと思われている方も多いのではないでしょうか。鑑賞のポイントや、マナー、寄席についての基礎知識をご紹介します。
笑って泣ける落語の世界
落語のはじまりは室町時代。大名のそばに仕える「御伽衆(おとぎしゅう)」と呼ばれる人たちが、大名の話し相手をしたり、世情をわかりやすく伝えたりしたことに由来するといわれています。
ある日、御伽衆の一人である安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)という僧侶が、豊臣秀吉の前で面白い「オチ」がつく話をしたところたいそう喜ばれ、「オチのある話=落語」として庶民の間にも広がったといいます。
このように、落語には、噺(はなし)の最後に必ずオチがあるのが特徴です。噺家は舞台の上で一人、身振りと手振りだけで登場人物を何人も演じ分け、聴き手の想像力をかき立てます。
物語のテーマはどこにでもあるような日常を切り取ったものが多く、おっちょこちょいな商人やずるがしこい地主などが登場する、笑って泣ける噺なのです。
初心者にお勧めの落語をいくつかピックアップしてみましょう
- まんじゅうこわい
長屋の若い衆が集まって「きらいなもの」の話に……とんちが利いたコミカルな噺。
- 寿限無(じゅげむ)
子どもに縁起のよい名前をつけてやりたい父親が、みんなから勧められた名前を全部つなげてつけてしまったという噺
- 時そば
そばの値段をごまかせたことに調子に乗る男の噺。そばをすする名人芸に注目!
- 元犬
白い犬がご不動さんに願いを聞き入れられて人間になった噺。しっとりとした人間味あふれる噺。
笑いと人情にあふれた古典落語は、はじめての人でもわかりやすく、自然にその世界観に入っていくことができます。
落語の楽しみ方いろいろ
庶民の娯楽として落語が広がったのは江戸時代のこと。そのころにはお金をもらって噺を聴かせる噺家が職業として確立していました。専門の小屋「寄席」が誕生したのもこのころです。寄席では多くの噺家が登場し、最後にトリを務める「真打(しんうち)」が登場します。
現代ではテレビやラジオのほか、CDでも落語を手軽に聴くことができるようになり、身近なものになりました。誰もが自由に演じることができる「古典落語」は、同じ演目でも噺家によって微妙に雰囲気が異なる面白さがあります。また、不思議なことに生とCDで聴くのでは、これまた違ったニュアンスに。
演目や噺家、聴き方によってなんども楽しめるのも落語の魅力のひとつです。
まずはホール落語に行ってみよう!
そうはいっても、いきなり寄席に足を運ぶのは気が引けるという人もいるかもしれません。落語は寄席以外にも、さまざまところで聴けます。
例えば、近くのコンサートホールや会館などの年間スケジュールをチェックしてみましょう。「ホール落語」と呼ばれる上演方法があり、独演会(特定の噺家が一人で演じる会)、二人会(二人の噺家による会)、一門会(一門の師匠、弟子たちのよる会)など、ホール落語ならではの楽しみがあります。寄席より気軽に足を運べるので初心者にはうってつけです。
独演会や二人会では一席の時間を40~50分とたっぷりとることが多く、落語の世界をじっくり堪能できます。バラエティーに富んだ一門会では、約15~20分のお弟子さんたちの新鮮な一席のあと、真打による名人芸をとくとご覧あれ。
お目当ての噺家の落語をじっくり楽しめることから、ツウにも人気のあるホール落語。寄席に比べて出演者が少なく初心者でも気軽に鑑賞できます。
寄席デビューのマナー
ホール落語と異なり、365日、いつでも落語を楽しめるのが寄席の特徴。東京都内では「新宿末廣亭」、「浅草演芸ホール」、「池袋演芸場」などが有名です。
3,000円前後のチケットを購入すれば、1日中落語を楽しめるお得なシステムも寄席の魅力。ある日の新宿末廣亭の昼の部をみると落語だけで12席、間に色物(漫才やものまねなど)が6席と、たくさんの演芸を楽しむことができます。途中で「仲入り(なかいり)」と呼ばれる休憩時間もあるので、食事も楽しめます。
落語を鑑賞する際の服装に決まりごとはありません。長時間座って聴くことが多いため、楽な服装で出かけてもよいでしょう。雰囲気を楽しみたい人は、和装にチャレンジするのも粋です。寄席によっては「着物割引」がある場合も。
携帯電話を鳴らしてしまうことやいびきをかいて寝ることは厳禁。歌舞伎や能楽と異なり、基本的に飲食は自由ですが、音やにおいが立つ食べ物は避けましょう。
伝統芸能とはいえ、落語は大いに笑って楽しむもの。面白いと思ったら、ぜひ大声で笑いましょう!
庶民の生活をテーマにした落語の演目は、現代にも通じるものばかりです。思いっきり笑えてときにホロリとさせる、落語の世界にひたってみてはいかがですか?
参考: